鳥たちはレクイエムを知らない/ホロウ・シカエルボク
 

白木の、長く伸びた廊下、そこに初夏の日差しを四等分して落としている窓は古い木枠作りで、ねじ込み式の真鍮の鍵でしっかりと止められていた、その光景は、ノスタルジーとはまるで違う種類の、記憶の生き方とでも呼べそうな現実だった、教室への扉はすべて施錠されていて、中へ入ることは出来なかった、もしも、入ることが出来たとしても、後方に積み上げられた木製の机と椅子のモニュメントがあるだけだけれど…わたしの、ソールが少し厚めのスニーカーは、そんな光景の中を静かに踏み荒らしていた、役目を終えてからもう三十年は経つ建物なのに、歩くことによる軋みはまったくなかった、ごく最近まで、管理されていたのかもしれない、いまは放
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