自分で自分を殺したりはしないさ/こたきひろし
 
に優しくしてくれた
三人が家からいなくなって家の中はまるで火がきえてしまったようになってしまった
私は
話し相手も心の拠り所もなくなってしまった

私はよく思い出す
姉たちは私がまだ小さい時に
よく私に女の子の服を着せて遊んでくれた

そのせいではないだろうけれど
私は女々しく優柔不断な男に育ってしまった
そして物事を悲観的にみる癖がついてしまった
その延長線上で
高校時代はやたら自殺願望を強く持ってしまった
自分のなかで死をいたずらに美化してしまった

手首を自分で切る姿を想像しては興奮してしまった
なぜかそこには性的な興奮も混じっていた
生と死と生殖と性の密接な繋がりを発見してしまった

だけど死への願望の正体は
単純に自分で自分を美化しているに過ぎなかった
演じているに他ならなかった

私は女々しく優柔不断で臆病な愚か者だった
それはいまだにかわらない

自分で自分を闇雲に愛しているだけで
自分で自分を殺せたりは
しないのさ

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