未完成の小編/こたきひろし
よっちゃんは母子家庭の子供だった
お兄ちゃんが一人いて、中学を出てすでに働き出していた
よっちゃんは小学校の四年生で、俺は五年生だった
俺とよっちゃんの家は近かったけれど、ほとんど遊んだ事はなかった
けれどその日よっちゃんから家へ遊びに来ないかと誘われた
「すごい本を見せてあげるから」
とよっちゃんは言った
学校から帰ると俺はよっちゃんの家へ行った
俺の家もよっちゃんの家も農家で山間の田園風景の中にそれらしく溶け込んでいた
誰もいないからとよっちゃんは言った
それは家の縁側の床の下に隠してあった
段ボールの箱の中に入っていた
本が入っていた
本はすべての頁が写
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