あじさい/田中修子
 
濃灰色に、重く雲があって
息苦しいような午前中に
雨がふりだした
傘が咲くだろう ひとはそのひとの人生のために 雨の底を歩いてゆく
歩んだ歩数のおおさ すくなさ おもさ かろさ
かろやかにたくさんあゆみたかったと思いながら
わたしはそのひとつひとつを数えながら

 ポトッ ポトッ
 ザー…… ザー……
 トトトトトッ トトトトトッ
 ピチャ ピチャ ピチャ
 シャルルル シャルルル

ことばにしきれない 雨のその音
音の数より人生があって そのひとつぶひとつぶが 少し歪んだがらす玉のように
正円でなくとも できるだけ 空の涙のように 澄んであればいいと

一日中
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