拭えない/ただのみきや
 
ひと口 ふた口
切れ切れになったドーナツ
片付かないテーブル
固着して動かない暗い光の厚み

幼子の足どりの覚束(おぼつか)なさ鶺鴒(セキレイ)の尾のタクト
風と雲 木漏れ日を撒いては集め
打ち明けられない秘密は
打ち明けても閉じたままお式着せられる

誘うような遠い片言
海へと下る葬列
すべり台の上から見た顔は輪郭を欠いて
ゆっくりと綿毛の向こう

幼子の足どりの覚束なさ鶺鴒の尾のタクト
追いかけて辿り着けない半身半獣の影
最初の雨粒 砂地を満たしはしない
いつまでも断ち切られたまま生はそこに




             《拭えない:2019年6月8日》







戻る   Point(7)