歩行器とロックンロール/服部 剛
 

――あらそうなの、坊っちゃん元気?
――今日も笑顔で支援学校に行ってます!
――あらそう…よかった
――暑いから、水を飲んでくださいね

――ありがとう

陽炎ゆれる向こうの
古い平屋の待つ方へ
くの字の腰を少し伸ばす婆ちゃんの後ろ姿
ゆっくりゆっくり歩いてゆく

ロックンロールを聞くために
僕はディスクマンの再生ボタンを、押す
鞄に入れて 立ち上がり 歩き出す 

川の方から吹いてくる
初夏の風に呼ばれるまま
目指す
今日の駅へ続く道を  





戻る   Point(2)