夢幻/
高林 光
目覚めたと気づく前に
さっきまでの夢を
思い出したいと思った
冬の海
君と僕
白い波
脈絡もなく記憶だけが
ぽつりぽつりと
胸の中にただよっている
空が
牛乳を溶かしたような
色をしていた
君が
僕の腕に寄りかかり
波の音
君も僕もなく
とけて
ひとつになればいいと思った
目が覚めたと気づく前に
さっきまでの夢を
思い出したいと思った
寄りかかった君の重さが
今でも僕の左腕に
残っている
( 吉田基已『夏の前日』に触発されて )
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