夢幻/高林 光
 
 目覚めたと気づく前に
 さっきまでの夢を
 思い出したいと思った

 冬の海
 君と僕
 白い波

 脈絡もなく記憶だけが
 ぽつりぽつりと
 胸の中にただよっている

 空が
 牛乳を溶かしたような
 色をしていた
 君が
 僕の腕に寄りかかり
 波の音
 君も僕もなく
 とけて
 ひとつになればいいと思った

 目が覚めたと気づく前に
 さっきまでの夢を
 思い出したいと思った

 寄りかかった君の重さが
 今でも僕の左腕に
 残っている


   ( 吉田基已『夏の前日』に触発されて )

戻る   Point(2)