黒い夕暮れ/
塔野夏子
黒い夕暮れ
かたちのない傷から
夢のように沁みてくるものがあり
壊れがちな覚醒
鋭角的な儀式の
あるいは 金属的なサーカスのさなかに
暗く降ってくるのは
誰の声なのか
蜥蜴の閃きでかすめた喪失の予感
幾重にも置き去りにされてゆく意識の輪郭
沈んでゆく
沈んでゆく
沈んでゆく
閉じられてゆく形象ばかりがただあざやかで
黒い夕暮れ
かたちのない傷から
夢のように沁みてくるものがある
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