音叉/ただのみきや
 
し 風は手を取った

心臓の音ではない
魂が出口を求めて激しく壁を叩いていた

母子像の癒着を見つめている
暗がりから
朱鷺のような眼差し
自由の目録を得て もう飛びそうもない
口先だけが出かけて歩く
お百度参りに酔い痴れて
いつでも白刃取りのつもり
 混ぜ返す引き出しの奥から
  長い 女の髪
   論じるくらいなら
  子供の遊びに立ち返り
   あなたの爪先に触れていたい
        小さな銀色の爪切り
          音叉のように 冷たく燃えて


 

               《音叉:2019年5月26日》






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