うたとみず/帆場蔵人
 
歌が、つたっていく

庭の忘れられたような手水鉢に
雨どいからひとしずくひとしずく

水はいつか溢れるだろうか

歌が
ひとの器から
溢れだすように

きくものをえらばない
染みいる地をえらばない
そのようなものになりたい

手水鉢に生えた苔のように
おのずとそこにあらわれ

ひとしずくひとしずく
あふれだすそのときまで

みずであったころを
おもいだそうとしている
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