膝の虚(うろ)/帆場蔵人
 
まだ、崩れていない膝がふるえている
わずかにたわみ、重みにたえているのか
生きてきた時間といま生きている時間に
ふるえながらも踏みだし、よろめき
それでも倒れない、屈するたびに
なんどまた伸ばされてきたのか

時に血に塗れて、己の血か、誰の血か

長い歳月をたえてきた樹木のようで
細く、だが強かに根を張り続けた足

動き続ける膝には時間にほられた
虚がある膝蓋に閉じられた深い虚

いつか骨となりすべてから解き放たれる
そのときまで膝は虚を抱えてふるえてのびあがる
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