Equus/石瀬琳々
 
ある日突然 少女たちは愛に目覚める
砂漠の朝 あるいは雪山の夜に
一頭の馬のように私のもとへ
走って来る そして駆け抜ける愛の痛み


運命だと知るには遅すぎるだろうか
少女たちは祭壇に祈る あるいは燈火に跪き 
花々が咲いて枯れてしまう前にどうか
一頭の馬のように私のもとへ
走って来て 愛を抱いたまままっすぐに


砂嵐の通り過ぎたあとで抱きしめられたように
雪降る森林のはざまに倒れ込むように
あのひとは私を見つめている 遠く谷山の彼方
オアシスに 凍りついた湖に


夢のくちづけは熱く滴る蜜
夜明けはこぼれていつか翼をもがれた鳥になり
雲になり風になり散って血のように赤くなる


それは秘められた契りのようなもの
少女たちは薄絹に目を閉じ 毛皮に沈黙を守る
愛だけを目印にして駆けてゆく
一頭の馬のように私のもとへどうか
待っている 待っている とこしえにあなたを



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