永遠の闇に飲み込まれない内に/こたきひろし
目を瞑ると
そこにある闇の中にあらわれるスクリーン
つかの間の映像がながれる
モノクロの景色の中に
幾つかの顔があらわれる
けれど
どうしてもある特定の人物の顔が捉えられない
それはなぜか
極々親しい人だったりするのだ
妻の顔
二人の娘の顔
飼っている猫の顔
そして自分の顔
きっとそれはあまりに近すぎて
顔や姿がぼやけてしまうのかもしれない
そのかわりに
普段働いているところの
何でもない人の顔はよくあらわれてくるのだ
事務所のおねえさまたち
現場の主婦パートさんたち
被写体からは当然男は外されている
年をとれば取るほど
異性に執着してしまうんだわ
永遠の闇に飲み込まれるまでは
たとえ飲み込まれても
性への執着心はねばってねばって
始末に終えないんだから
それは男も女もどっこいどっこいだっぺな
きっと
戻る 編 削 Point(0)