妻へ/花形新次
二十三のときに出会って
二十四で俺の子を身籠った
翌年生まれた子は自閉症で
俺はあわてふためいて
子供の将来を悲観し
わめき散らしたけれど
おまえはただ
「それでも私の子に変わりない」と
静かに言いはなった。
それを聞いて
ただ恥ずかしくて
うつ向いたまま
涙を流したのを覚えている
おまえには
もっと自分を楽しむ時間があったはずだか
そのほとんどすべてを
俺が奪ってしまった
おまえは、息子の施設の友達相手にも
まったく分け隔てなく接することが出来た
それは自然そのもので
少し顔をひきつらせながら善人を装う
俺なんかとは全然違うものだった
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