自慰/こたきひろし
ブレーキがまだついてなかったに違いなかった
人間を制御するブレーキが
人前を憚らず
女のこの幼児が自分の下着の中に手を入れて触っていた
恍惚の表情を浮かべながら
若い母親は立ち話をしていた
僕の母親と
二人は話につい夢中になって気づいてなかった
それはほんの短い間だったかもしれないが
一瞬に濁流となって私のなかに流れ込み
その後の私を支配した
小学校にあがったばかりの私だけがそれを見ていた
そしてその時女のこは僕の方を見ながらしていた
女のこの母親も
私の母親も共に農婦だった
真夏の昼下がり
二人はいい色に日焼けしていて汗をかいていた
私の
[次のページ]
戻る 編 削 Point(5)