自慰/こたきひろし
 
ブレーキがまだついてなかったに違いなかった
人間を制御するブレーキが

人前を憚らず
女のこの幼児が自分の下着の中に手を入れて触っていた
恍惚の表情を浮かべながら

若い母親は立ち話をしていた
僕の母親と
二人は話につい夢中になって気づいてなかった

それはほんの短い間だったかもしれないが
一瞬に濁流となって私のなかに流れ込み
その後の私を支配した

小学校にあがったばかりの私だけがそれを見ていた
そしてその時女のこは僕の方を見ながらしていた

女のこの母親も
私の母親も共に農婦だった
真夏の昼下がり
二人はいい色に日焼けしていて汗をかいていた

私の
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