灯台守の話/相田 九龍
岬には灯台があった
高さはそれほどないが、白く野太く、確かな存在感で岬にあった
灯台には灯台守がいた
彼は正しくは灯台守ではない
しかし、灯台に住み着き、彼は彼の守りたいものを守っていた
風が強い日、彼は外に出て遠くを眺める
蓄えた髭や髪が風になびき
目を細め、じっと遠くを見つめている
彼が灯台にいるには理由があった
彼は灯台にいるしかなかった
白く野太い灯台が彼を守っているようでもあった
風が強くなると、岬で荒潮が弾けた
灯台はそり立つ崖の上に立っていた
弾ける波しぶきが灯台まで届くこともあった
彼には忘れてはいけない歌があったが、うまく思い出せなくな
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