「夢見る頃を過ぎても」/白砂一樹
 
と遠い夢を見ている
夢見る頃を過ぎて初めて俺は夢を見ている
俺は今生きている 俺は今夢が叶わぬ苦しさを知っている
俺は今生きている 体と心に痛みを感じている
生きるということは苦しむことだ 苦しむということは走るということだ …夢に向かってね

夢はしゃがみ込んでいるのにも疲れ果てたようだ
夢はすくっと立ち上がる 夢は俄然走り始める …己の老いを自覚もせずに
俺は今遙か彼方に居る人に狂熱的に呼びかける 「生きていてくれ!」「生きていてくれ!」と痛烈に連呼する 喉が潰れる迄 俺の生が燃え尽きる迄 俺は叫び続ける 永遠迄ね
夢想家の独り言と言われても構わない 俺は俺の道を往く …君は君の道を往ったらいいさ
そして俺の道と君の道が交わった時 奇跡は起こるに違いない!


「ああ俺はあの頃の俺よりずっと若い/夢見る頃を過ぎても」




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