「夢見る頃を過ぎても」/白砂一樹
路傍に夢はしゃがみ込み 動こうとはしない
いつだって道の傍の暗がりに そいつは居たんだ
俺は停まって居る …永遠に停まっているのか、俺は?
あの90年代に於いて 俺に夢はなかった
俺は「独りぼっちのお祭り」に酔い痴れて 素面だったためしがなかった
数多くの人々が俺の周りを通過して行った 俺は何も気付かなかった
俺は夢見心地だったが 俺に夢はなかった
見上げる空は青かったが 俺の心は黒かった
俺は死んでいたが 俺は「ふっかつのじゅもん」を唱えなかった
生ける屍たる俺は饒舌だった しかし全ては空念仏だった
眠りのさなかに見る夢だけが夢だった
今俺は夢を見ている ずっとずっと遠
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)