終わりなきもの/木立 悟
ゆるい灰色の坂をのぼる
両側につづく
新しい建物たち
風に前かがみになり通りすぎ
雪にまばたきながらふり返る
さみしさには おそらく
終わりはないのだろう
雲の流れの先には
白い炎がたなびく
はり付いた家からのびる
はり付いた影を踏みしめ
午後へ午後へと坂を下る
つめたさには おそらく
終わりはないのだろう
醜いことだけが思い出となり
やがてそれも消えてゆく
そこには何が建っていたのか
気が付けばもう忘れている
道だけがどこまでものびてゆく
かなしみには おそらく
終わりはないのだろう
幼いころから変わらぬものが
切り取られた山の斜面に立っている
守れなかったもの
汚れてしまったものも一緒に
交差点の光を見つめている
独りには おそらく
終わりはないのだろう
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