眩しくて一瞬前が見えなくなった/こたきひろし
夜道
突然何かがヘッドライトに浮かび上がった
猫だと直感した
避ける暇もなくブレーキを踏む間もなかった
瞬間、タイヤが踏んで ぐしゃり 鈍い感触があった
が
そのまま通り過ぎてしまった
ごめん
ハンドル握りながら思わず声に出してしまった
ごめん ですむわけがない
もしかしたら
もしかしなくても
後続の車のタイヤに連続して轢かれたに違いない
どうかした?
誰に謝っているの?
助手席の女友達が訊いてきた
彼女は何も見ず 気づいてもいない様子だった
若者は咄嗟に答えを飲み込んだ
何でもないよ 気にしないで
そんな嘘を口にしてしまった
若者の頭のなかは一つの事でいっぱいだった
車は国道を走っていた 一刻も早く車をモーテルに停めてしまいたかった
そして女友達をどうにかしてしまいたかった
それはお互いが口には出さないけれど暗黙の了解があると
勝手に決めつけていた
猫の生死に関わってなどいられない
猫の生死になんて関わってなどいられない
のだ
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