環天頂アークの下で/アラガイs
 
のだろう。
白い布に巻かれたまま、誰が傍らに寄り添い、なにを夢見ながら異界に旅立って逝ったのだろうかと…
あれはいつの日だったのか。
山頂に辿り着いたとき、寄り添う年寄りたちは突き出た石の背に腰をかけ、眺めるのは麓から沸き上がる雲海のざわめき。
やれやれと重い腰を屈めた母親の、傍らにある硬い石を促してやり、 何か欲しいかと尋ねていた。
すると老婆はわたしの顔を見て、林檎じゅうすと笑いながら小さな声で応えてくれたのだ。
やがて雲海が晴れ渡り、山河巡る駿馬句の景色が顔を覗かせる。
荒れる対岸の河を乗り越え、こうして辿り着いた山の頂上。
見下ろせば七つの色彩に染まる輪の麓。空に響きわたる鬼どもの笑い声。 夢見るように、眠りたい、
、 そうだ、 わたしは笑い声のなかで眠っているのだ。



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