春の宵 ほか二篇/石村
 
春の宵

巨人の足あとに水が溜まつてゐる。

ここからは月が近いので自転車で行かう。



(二〇一八年四月十八日)




  昼下がり


どうにもならんのだよ

庭で脚の悪い末つ子が鞠をついてゐる

どうにもならんのだよ と父親は呟く

柿の木に子鬼が片手でぶらさがつて
こちらをみてゐる

嫌な日だ

昼下がりが長いのだ



(二〇一八年四月二十四日)




  たんぽぽ


花を見に行かうと思つた
桜はほとんど散つてゐた
きたない川べりに行くと
たんぽぽがいくつも咲いてゐた
ひとつ千切って たべてみた

ばかなことばかりしてゐる



(二〇一八年四月二十四日)



戻る   Point(22)