強い男には/こたきひろし
涙混じりで見た空と
渇いたこころで見た空に
何も違いはなかった
筈
人は人だし
俺は何処までも俺だから
人の眼に写る空と
俺の眼に入る空の景色は
きっと違う
筈
孤独を噛みしめたい時は
周囲は殺風景でいいよ
相手が欲しい日は
華があればいい
お互い気持ちが和むから
ずっと昔から
強い男に憧れてきた
なのに俺の正体は弱虫
弱虫にしかなれなかった
無口ではあったけれど
寡黙とは言えなかった
大人しくて真面目だったが
実直で誠実とは言えなかった
アア
何だろうこの人生
よくわからない
謎ばかりで
それでいて
その謎解きにかかる意思は持ち合わせていない
自分が存在している理由さえ
いつも尽きる事のない靄に飲み込まれていた
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