我が世代/メープルコート
明け方の応接間で一人、壁に漂う船を見ている。
日常の埃にまみれた心に壁際のアロマが沁みこむ。
軽めの葉巻と淹れ立ての珈琲。
この部屋の壁一面にも時代の匂いが沁み込んでいる。
癒しを求める心と刺激を求める心が交錯している。
何者でもない自分は何者なのか。
真っ白な世代。
出来る事といえば、無口を貫く事だけだ。
経験が空しく散ってゆく。
今の青年達にかけてやる言葉すらない。
優しさと厳しさの不調和。
無口のくせに相手に求めてはいけない。
そうして歴史の逃げ道を探す中年世代。
そんな気持ちの悪い大人が一人、漂う船に思いを馳せている。
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