ミイラ男は泳げない/帆場蔵人
 
消えてしまうのよ
みな底の水が囁いてくる、けれど……

包帯を振りほどき
不恰好に手足を伸ばせば
ぼくという輪郭が泡となり
失われていく、包帯は哀しげに
みな底でゆらめき嘆くばかり

泡と消えるまえに出会った、あなた
赤毛の水を抱きしめてぼくという輪郭は
取り戻されていく、さぁ、どこに行けばいい

わからない、けれどその迷いすら
愛しい水に抱かれながら不恰好に泳げば
幸いでしかなかった、さよなら、包帯
さよなら、始めて愛してくれたひと

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