それでも行くと言うのなら/カマキリ
海岸の町をぬけていく
錆びた看板に風があたって
クジラの声がする
思いを刻んだカーテンを
めくっては繋ぎ直して
あとに残したギザギザする感情に
また風があたってようやく
琥珀ができていく
網目の道をタクシーで縫っていく
目の端に映る懐かしい全てを
暖かくて絡まりつくような温度が
つかめない大きさにしてしまうから
振り返ることは重罪になったんだ
太陽がおちて
夜の地鳴りが響いた
細くて、長く
触れたら切り刻まれそうな
茶色い髪を
またどこかで見かけた気がする
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