朝の日記 2042夏/たま
すくていいけど
昭和平成と生きて令和で死ぬつもりだった
元号のない日本なんて
どこの国だかわからない
名のない時代に死ぬなんて
この歳まで生きて
たったひとつ心残りだけどしかたない
ここは日本人居留地だ
築五十年の
だから餓死がいい
適当に焼いてくれ
家は外国人にくれてやる
日が射す部屋に
ゴムの木を一本残しておく
妻と結婚した年に買った鉢植えだ
部屋中に枝を伸ばして動こうとはしない
部屋の窓をぶち破って
屋根まで伸びている
遠くから見ると大きなゴムの木に見えるだろう
築五十年の 俺の家
もう誰も
俺を動かすことはできない
飛行石なんて
アニメーターの嘘だったけど
夢は 嘘じゃなかった
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