幸せな人生/邦秋
招きたくないからだ。
怒りや絶望を燃料にして筆をとったとして、
それを対象や周囲に直接ぶつけないために
感情を包装紙で綺麗に包み込む。
ラッピングをした言葉で周囲に心配を与えるようでは
丁寧に表現を選ぶ努力が無駄になるからだ。
しばらく、有難いことに作品を生み出す泉が枯れていたのだが、
お蔭様でここ数日は順調に筆が進んでいる。
その中で、作りたてのメロディに載せる言葉を選ぶプロセスを楽しむことで
僕は、僕の怒りの感情を薄めていく。
それだけで穏やかな日常に帰ってこれるから、
僕は幸せな人生を送れていると思う。
戻る 編 削 Point(1)