幸せな人生/邦秋
 
招きたくないからだ。



怒りや絶望を燃料にして筆をとったとして、

それを対象や周囲に直接ぶつけないために

感情を包装紙で綺麗に包み込む。



ラッピングをした言葉で周囲に心配を与えるようでは

丁寧に表現を選ぶ努力が無駄になるからだ。


しばらく、有難いことに作品を生み出す泉が枯れていたのだが、

お蔭様でここ数日は順調に筆が進んでいる。



その中で、作りたてのメロディに載せる言葉を選ぶプロセスを楽しむことで

僕は、僕の怒りの感情を薄めていく。



それだけで穏やかな日常に帰ってこれるから、

僕は幸せな人生を送れていると思う。
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