未音/木立 悟
途切れ途切れの夜の声
混じることのない冷たさと冷たさ
誰もいない川辺の土に
異なる光は降りおりる
鳥が一羽
世界を引き連れて歩いていた
目の奥に浮かぶひとつの雲に
輪の回転を重ねていた
受けとめきれない音ばかりが
冷えたからだに降りそそいだ
雪の上でまるくなり
鳥は朝を待っている
光のつぶてが川に落ち
音は響くことなく色になり
雲の火 土の火に触れる
いたるところに水は流れ
他の水の名を呼んでいる
大きな粒も小さな粒も招かれて
指先の声をひらいてゆく
鳥の羽を
くちばしを流れる
にこやかでさみしげなものたちは
こぼれ落ちていきながらまたたき
夜に蒼く
夜に苦い
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