狂犬/マサヒロK
 

その時の歯型から感染したものと思われる
あの時のあの男の顔
目が据わっていたあの男の顔
何かに取り付かれたような顔
俺はこの世の王だ
誰にも邪魔されない
次は誰に噛み付いてやろうか
と言いたげだったあの男の顔
あの顔は忘れられない
その後事ある毎に
俺もいつか誰かの腕を
肉がちぎれる寸前まで噛み付きたいものだ
男はああじゃなきゃいけない
あそこまでやってこそ男
と噛まれた腕のあたりをさすりながら
思う次第である
「内なる狂気を飼いならし
健全なる一社会人を演じる」
私は健全である


(40代制作)
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