火炎の花が空に/こたきひろし
 
全員が死んでしまった。
アパートの住人は一人残らず死んでしまった。

昨夜、アパートに火災が発生したのだ。
近隣に延焼はなかったが、一度に燃えていっぺんに黒焦げの残骸になった。
その灰の中から三人の遺体が発見された。
老人の夫婦と中年の独身男性が一人。人物の特定は難しい姿だった。

アパートはかなり老朽化していた貸借物件で、二階建てだが四部屋しかなかった。
それが殺風景な中にぽつんとあった。周囲には三軒だけ新築の家が建っていたが、景色を占有していたのは
畑だった
細い道が通っていて、それに沿った場所にアパートは建っていた。有るようなないような空き地がアパートの建物の前にはあっ
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