旧作アーカイブ3(二〇一六年二月)/石村
 
 訣別の歌


誰かが僕を 呼んでゐた
みじかい笛を 吹いてゐた

誰かが僕を 呼んでゐた
み空の底は ふかかつた
風は終日 吹いてゐた
骨がからから 鳴つてゐた

その子は野原で 遊んでた
たんぽぽの綿毛を 飛ばしてた
誰も迎へに 来なかつた

ああ 笛がきこえる きこえるよう
僕 もう行かなきや もう行くよ さよなら

ああ 逝つちゃつた! 
でも その子は気付かず 遊んでた 
その日も 明日も 明後日(あさって)も

 そして 星が消える
 皆が積みかさねた悲しみも消える
 想ひも消え 願ひも消え 祈りも消える

 ああ さつぱりした
[次のページ]
戻る   Point(15)