よろこびのうた/中原 那由多
 
蕩けた
さくらんぼ

季節外れの台風が
火照った頬を慰めながら

笑う
笑う
笑いながら
咲いて
咲いて
咲き誇る
武者行列が
押し寄せるなら
舞うのを待って
待ちくたびれた
くびれた背中
めがけて落ちた
飛行機雲は
帰路への誘い


サザンクロス

音無く口元かっ裂きながら
差し迫る
差し迫る

茜色の深呼吸

本に挟んだ
栞のように窮屈で
摩天楼を這いずる
蝸牛のように果てしない

再開された物語は
ジンベイザメであるかのように
悠然として星を喰らい
一粒の砂の為に
大地を燃やしながら
ひたすらに闊歩する
忘れ去られた野獣の竜巻と共に
眼血走り沸々と
白濁色を吹き出して

時は逆様真っしぐら
時は逆様真っしぐら


無防備な背中
純粋なネイビー
歪な白線を
引いた
三本
抱きしめて
抱きしめて
青い衝動
柔軟剤と背徳心
君に包まれ破れてしまった
奇抜な便箋のラブレター

紙吹雪

凹凸と
引力の
隙間から無礼講
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