夕暮れに詩なんか書いて/高林 光
ものわかりがよくなったような顔で
笑いも怒りもせずに
人の話を聞き
夕暮れに詩なんか書いて
夜には酔わない酒を飲み
寝つきの悪いベッドに入る
真っ暗な部屋に少しだけ目が慣れた頃
掻き集めた昨日と今日を
明日もまた守るための準備をする
それが生きる術なのかすら
考えることもせず
他人を傷つけたことには
暢気に気づかず
自分の痛みには敏感で
一人でパソコンの空白に向かい
何を生み出すのかも分からない
言葉だけをつなぐ
そんな今日に
生きた手触りはありましたか
エレベーターの閉まったドアが
幾度かの暗闇を通り抜け
また開く時の高鳴り
ベルの奥の足音と
開く鍵音
きみの部屋の匂い
言葉もない、いまの想いが
今日もまたひとつ積み重なるなら、ぼくは
ざわめく嫉妬と
うらはらな愛の引力を
もっと素直に
見つめることができるのかもしれない
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