声と鉛/木立 悟
 





闇さえわたし
照らすことのない
光さえわたし


鉄柵の奥の
まぶしい水
冷たくひらく
ふたつの香り


二重の曇
二重の径
まがいものの絵筆の空を
白と黒が染めてゆく


鳥が枯木を描き
枯木が鳥を喰う
曇をなぞる光
首元に降りて来る


灯りのなかに消える灯り
闇を置いて去る灯り
砂に波に花は無く
空の花が映るばかり


声と鉛
片目の重さ
遅い贈りもの
手から手へ仄かに


こがねの夜が指すところ
終わらぬ痛みの舞うところ
わたしと歩むものはない
光が音が つづきつづきゆく

























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