かげにかくれて/高林 光
雪の溶けたアスファルト
ゆっくりと歩く、ふたり
街灯の明かりが斜めに遠ざかって
少しまえの、ぼくが
きみの影を踏む
通り過ぎるヘッドライト
ビルの窓から漏れる光
降りだした春の雪
ふたりが歩くには、ここは
明るすぎるような気がして
くぼみに残る水たまり
少しよけて歩く、ふたり
街灯の明かりが斜めに近づいて
少しあとの、きみが
ぼくの影を踏む
夕暮れの部屋の記憶
服に残るきみの香り
ほどけない指と指
あの街灯の下で
重なりあうふたりの
かげにかくれてキスをしよう
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