ドアー/ツノル
 
な化け物は決して自分を責めたりはしないものだ。族という囲いの中だけで身を包む。外側で被る迷惑など気にもしないのだ。やさしさが弱さになり族を奮い立たせれば怨みは完結する。知覚する怨みとは逆に気の弱さの表れなのだ。土塀の縁から音を立てて崩れてくる。雑音を打ち消す予感がする。群れからはみ出した者の鋭敏な予感が。ドアの鍵はちゃんと閉めたのか。きっと待ち伏せされるかもしれない。剥きだしの刃があたまを過る。静脈が縮む。考え過ぎて思考を巡らすのはよくないことだ。酔いも近い。熱いウイスキーならば二杯にとどめておこう。冷めてくれば逆に眠れなくなる。足音は聞こえたのか。それでも、呼び鈴を鳴らすのは誰だろう。


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