緑の地獄/中原 那由多
掻き毟り
痛い
と
左手は首を抑え込み
ぬめりを帯びた背中からは
潰れた蝉の抜け殻の破片に
くすぐられているかのような
歯痒い感触と共に
赤い棘が生えてくる
(四秒間の沈黙)
心臓が、飛び出す
心臓が、飛び出す
急所への一撃
膝から崩れ落ちながら
直立不動の本音へ向けて
負け惜しみ
心臓が、飛び出す
心臓が、飛び出す
心臓は、飛び出さないから
緑の地獄で右往左往
目を瞑ったまま
音の鳴る方へ行けば
ーーー落雷
その先に吹く風からは
春の匂いがする
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