ひかり ふるえ/木立 悟
匂いの無いうたから
花は聞こえ来る
雨の針 雨の針
ひとつひとつに
霧を閉じた粒
さくさくと喰む曇の
ゆるやかな揺れゆるやかな揺れ
水が到く前の
手のひらの静けさ
集めたものを返した後の
音の冷たさ
空の大きさの
双つの蜘蛛の巣が重なり
星をずらし
星を増やす
氷のはざまのまだらな夜を
踏みしめながら歩くとき
曲がる月の曲がる色
何かを孕んだ淡い色
常に震えている空の
ほんの少し横を見る雪
重たく
静かな闇
冬の鳥の会話
夜の屋根を流れ
星はひとつ 波に浮かび
新たな行方を指し示す
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