目蓋の裏のみな底/帆場蔵人
とじた目蓋の裏に海がさざめいていて
丸めた背中の上を野生の馬たちが疾る
寝息を受けて帆船が遠くへ遠くへ
あなたの存在そのものが夢のよう
そんなふうに思えたことがあった
ひとりでない、なんて夢のようなまぼろし
いつの夜だったか
真夜中の坂を行進して
朝とともに転げ落ちた
やはりひとり、で
丸まって眠る子ども達の
抜け殻を見下ろしている
見上げれば星の群れが
ひとつひとつ、違う速度で
羽ばたき、電線が波うつ
海はなく、野生の馬たちの嘶きも遠く
ふたりの抜け殻は
帆船の一室で
手を繋いだまま
遠く 遠くへ
目蓋の裏 みな底へと沈み
坂の下から
朝の方角へ
歩みさるひとびと
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