幻肢痛/
言狐
朝焼けが出る少し前に、忘れられない思い出をひとつ捨て
それが朝日に溶けるのを見届けてから仕事に行くのが日課だ。
そうすることで、ぼくは大人になった。
だけど最近、夜遅く。
自分の体が暗闇に沈む頃捨てたはずの思い出たちが
がりがりと皮膚を引っ掻いてくるような感覚がする。
捨てたのだから、そんなはずはない。
けれど、確かに痛かった。
捨てたはずの思い出たちに傷つけられ
流れた血の色を、ぼくは必死に見ないようにした。
戻る
編
削
Point
(0)