月の風船/立見春香
月が浮かんでいるのを
私はジ〜ッと
見上げ続けていた
月が、ふわわわ、と
ほんとうの意味なんて知らないけど
あたたかい人のモノマネをして
ふわわわ、と微笑んでいるのを
私は
私のいちばんやわらかい
《無垢無垢な》こころを隠し込んで
両手を背中のほうで組んで
(手も出せない、の寓意かな?)
(こころのなかで)
指を咥えて、
涙目になりながら、
ただ、欲しいよぉ、欲しいよぉ、って
馬鹿みたいに望んでいたんだ
月が、ふわわわ、と、ふわわわ、と、
なんの悲しみもない世界を
偽装してでもいい
ただよっているのを
ほんとうにみることさえできたなら
私
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