春のこと/はるな
 
いし。
金鳳花、ひかりに溶ける花びら、いつになったら実がなるかな?
女という呪いのなかで咲けるなら、がびがびの体操服をきるのもがまんしようっておもった。洗われない絵筆、汚れたパレット、幾重にもかさなってあたらしい悲しいをつくる、そうだ、わたしたちは、みていたよね。
とおーい声がするのを、手のひらのさきとか、つま先の向こうがわにみていた。女が呪いじゃないなら、咲かなくてもいいなら、分かり合えなくても良いのなら。実らなくても良いのなら、恋だってするんだよ。猫がするみたいに、はだしで、声をあげてね。
あしたは晴れるでしょう、って人工音声がおしえてくれる。
いいえ、キスが降りますよ、ってわたしたちは言う。


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