なぜ詩を書くのか/石村
で最も不要不急の所業のひとつで、詩を書く以外に能のない私などはこの世の何の役にも立たぬ無用者だ。詩は生きるために必要なものではない。それでいい。ひとが己のいのち以外のすべてを失った時、生死の狭間に呆然と立ち竦んでいる時、いつか心に刻まれた言葉だけがまだ残っていてその人に響き、語り掛けてくる、そのような言葉があるとしたらそれが詩だ。
いのちひとつだけの素裸になった人間の手元に残された唯一のものであるような、そういう言葉を残すために、私は詩を書き続けている。
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