旧作アーカイブ1(二〇一五年十二月)/石村
 
音で
或るかなしみが お前の心に かさなつた
雪の上に もうひとつの雪が ふれ ひとつになるやうに
僕は何も 囁かなかつた 

何ゆえに 僕は出て行くのだらう そして 何処へ
忍び入る 恐れ お前はすでに 僕から遠い
ひとびとは ああ ああ はなれていつた
ふたつの想ひに 欠けてゐたものはなかつた それでも

雪は ふり続く 古い儀式のやうに
かへる場所のない 子どものやうに ひとはたたずむ
お前が見たものを 僕は見なかつた

さうして絆が 解(ほど)けてゆくと どうして
お前に わかるだらう どうして
僕に わかるだらう?


(二〇一五年十二月二十九日)




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