モギリ / 冷たい大理石の記憶/beebee
 
どんどん階段を降りて行った。
 小学校に上がる前の一時期、私は商品タグのモギリに夢中だった。いつの間にか我を忘れて、手にいっぱいの商品タグを握り締めていた。厚紙に押し型して彩色された商品タグはバッチのように輝いて見えた。でも肌着売場の商品タグは、みんな同じような長方形の厚紙に、白地に紺色の実用的な文字で書かれていて、いっぺんにたくさん取れたけどつまらなかった。私は両手いっぱいになるとすぐにそれをゴミ箱に捨ててしまった。私はとても悪い子供だったのだ。
 私は母親の手にぶら下がりながら、通りすがりの商品タグを物色した。母親が商品選びに時間を掛けていると、私はそっと手を離して、独り狩りに出かけるのだ
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