やわらかな約束/塔野夏子
 
迎えに来てください
鴇(とき)色の雨が降る春先に

私は待っているのです
私の胸にはその約束が
したためられていますから
鴇色の雨がふる春先に
迎えに行きますと

いつ 誰がしたためたものかは
知りません
けれどその約束は
私の胸の中で
ふしぎなうるおいを保ちつづけ
春が近づくと
私を窓辺にたたずませるのです

鴇色の雨が降るのを
ただせつなく待たせるのです



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