干からびた流木を集めて人生と言う筏を組めば/こたきひろし
ら俺は気づかなかった。妻は何も言わなかった。俺を気遣って一人で抱え込んだ。
俺には教育の方針なんて何もなかった。ただただ働いてお金を稼ぐ事に一生懸命だった。家族を養うのが俺の使命だった。自己犠牲の坩堝に嵌まっていた。
長女が不登校と知った時にも次女がそうなったと知った時にも何も出来なかった。
そうなった理由と原因さえも訊けず問い質せないままに現実から逃げてしまった。
川原の干からびた流木を集めて組んだ筏に乗ったら
いずれは壊れて足場を失い沈むとわかっているのに
川に漕ぎだした
少年の日の愚かな振るまいのように
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