ほかのどの木でもなく/佐々宝砂
からたち
くわ
杉
くすのき
木を割る
ナタは少し重いくらいがいい
そういうことはきちんとわかるが
なにがほしいのか
わからなくなって久しい
からまるツタは
ていかかずら
あけび
へくそかずら
すいかずら
ツタは古く太くなってもやわらかにしなり
簡単に切れてはくれない
はっきりとしない記憶の滓が
鼻の奥でつんとする
火を放つ
くすのきはくすのきの
からたちはからたちの
炎あげ煙あげ
匂いたちこめ
いまほしいのは杉の木が焼ける匂い
わたしの身体の芯
捨てようもない中心にあるなにかと
組成が同じだと思う煙
ほかのどの木でもなく
杉の木の
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