ある変成/塔野夏子
 
そのひとの居場所は
薄くなりつづけていた
何故だかわからないけれど
薄くなりつづけていた
だからそのひとは自分のかたちを
次々と言葉へと変えていった
言葉ならどんな薄い場所でも
息づける
鼓動が打てる
ついにそのひとの居場所が
紙一枚の薄さになったとき
そのひとは自分のかたちを
すっかり言葉に変え終えていた
それを見かけた誰かが
それを詩と呼ぶのかもしれなかった




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